「C型肝炎治療、新薬で期間半減-ウイルスを撃退 肝臓がんを予防-」

投稿日:2013年10月28日|カテゴリ:医療コラム

C型肝炎の新しい治療薬が9月、厚生労働省に承認されました。
効き目が良くて副作用が少ないのが特徴という。肝臓がんの8割は、ウイルスがもたらす「C型肝炎」がもとで発症する。
従来の治療ではウイルスを除く薬を長期にわたって使い、頭痛や体のだるさといった副作用が大きな悩みだった。仕事や家事に支障が出る人がいた。
患者の負担を少しでも軽くできると、専門医は期待している。

【C型肝炎ウイルスとは、原因】
C型肝炎ウイルスは、血液を通じて感染します。
医療機関などでの感染対策が進んだ今は、カミソリや歯ブラシの共用などが感染原因になると指摘されています。
約半数は感染源が分からない。C型肝炎ウイルスに感染すると急性肝炎を発症するが、自覚症状がほとんどありません。
その後3割の人は自然に肝臓からウイルスがいなくなって治ります。残る7割は、知らない間に慢性肝炎になり、放置すると肝硬変に陥ります。
肝硬変が恐ろしいのは、治療しなければ4割が肝臓がんになってしまうところです。逆に肝臓がん患者を調べると、その8割がC型肝炎ウイルスに感染しています。慢性的な炎症が起こると細胞分裂が盛んになり、がん細胞が生まれやすくなります。

【再発・高齢者も効果】
新しい治療では、3つの薬を併用します。まず「ペグ・インターフェロン」という免疫細胞を元気にする薬を週1回、注射します。さらに「リバビリ ン」というウイルスの働きを抑える薬を毎日2回服用。それに加えて新開発のシメプレビルナトリウムを毎日1回飲みます。新薬を使った場合の治療期間は半年 です。従来は1年間だったが、半分に短縮しても効果は高いといいます。
3つの薬のうち、インターフェロンは副作用が深刻です。風邪のように頭痛や発熱、体のだるさの症状が表れたり、肺炎を起こしたりする。つらい副作 用が長く続き、仕事を辞めざるを得ない人もいたといいます。新薬によって治療期間が半分になれば、これから治療を受ける人にとってこれまでより楽になりま す。

新薬を含めた3つの薬の併用は、効果を試した臨床試験(治験)の結果によると、9割の患者でウイルスを体から追い出せました。従来の治療が効きにくかった高齢者や、治療を終えて肝炎を再発した人にも効きました。新薬による新たな副作用もなかったといいます。
新薬は治療期間を縮めるため、それだけインターフェロンを使う期間を短くできます。また副作用を避けたいとの思いから、来年にはインターフェロンを使わない治療法も実用化される見込みです。
ただ、インターフェロンを控えたときに懸念されるのは、薬が効きにくくなる耐性ウイルスの出現です。これまでは、体の免疫力を高めるインターフェ ロンの併用によって、薬剤耐性ウイルスの出現を予防していた面もあるからです。また、インターフェロンを使わない治療法は、ウイルスの排除が全体の8割程 度にとどまるとの見通しもあります。

【男性が女性の2倍】
肝臓がんは日本人に多い病気です。がんは死因の3分の1を占め、肝臓がんによる死者は肺がん、胃がん、大腸がんに次いで4番目に多く、年間3万人が亡くなっています。男性の方が多く、女性の2倍です。
肝臓がんはC型肝炎ウイルスを除去すれば、発症のリスクが大幅に下がるといいます。患者を減らす手立てがあるならと、厚生労働省は医療費を助成してウイルスの除去を推進しています。

血液検査などで肝炎ウイルスの感染が疑われた場合は、肝臓の専門医を受診したいものです。遺伝子検査や最新のデータで、最適な治療方針を決めてくれます。専門医は日本肝臓学会のホームページ(http://www.jsh.or.jp/medical/specialists/specialists_list)で確認できます。