「高山病 知って防ぐ」

投稿日:2013年8月28日|カテゴリ:医療コラム

富士山の世界文化遺産登録や史上最高齢の80歳でエベレストの登頂を果たした三浦雄一郎さんの活躍などで登山が注目を浴びている。
最近は身近なレジャーと しても人気だが、ブームが定着してより高い山に登る人が増えると「高山病」を発症する確率は高まる。出張や観光で海外の高地に行っても、高山病の危険はあ る。「まさか自分が」と慌てる前に、あらかじめ症状をきちんと知っておきましょう。

高い山に登ると頭痛などの症状が現れるのが「急性高山病」で、一般に高山病と呼ばれる。高度2500メートル以上が一つの目安という。ただ、個人 の体質や体 調によってまちまちで、3000メートルでも大丈夫な人もいれば、2000メートルで症状が出る人もいる。高地に到着して数時間後から数日までに発症す る。

富士山の5合目でも2000メートルを超える。日本でも3000メートル級の山々がある。登山ブームが定着すれば、登山家でなくても一般の人でも高山病になるリスクはある。
また標高3000メートルを大きく超えるボリビアや中国チベットなどは、そこにいるだけで高山病を発症してもおかしくない高さだ。仕事や観光で赴くときに、高山病対策は役に立つ。

高山病の症状は2500メートルで25%の人に現れ、4000メートルを超えると半数以上に出るとい う。日ごろから体を鍛えていて体力には自信がある人もいるだろうが、「体力の有無と発症は無関係」な場合もあるので注意喚起する。

【頭痛が共通の症状】
高山病で多くの人にほぼ共通しているのが頭痛だ。加えて、どんな症状が出ているかで高山病の程度を評価する。食欲不振や吐き気と いった消 化器系に関係する症状、目まいといった神経の症状、眠れないという睡眠関係、息苦しいといった呼吸器系の症状が頭痛と併発している場合は高山病の可能性が 高いという。

また、一つ一つの症状の程度によって、重症かどうかが分かる。重い頭痛の場合、市販の頭痛薬を飲んでも治らない。むかむかといった症状で収まら ず、吐いてしまう。息苦しくなり歩けなくなる。突然しゃべらなくなり、周囲に無関心になるといった症状が出た場合は特に注意が必要。

高山病は、その日の体調によっても発症する高度が異なります。登山前日の睡眠不足や二日酔いはもちろん避ける。高血圧や糖尿病などの基礎疾患を持っている人は薬の投与をどうするかなど「主治医に相談するのが望ましい」という。呼吸法も口をすぼめて、深くやや速くする工夫も酸素の取り込みを助ける。

高山病をなぜ発症するのか、詳しい仕組みは分かっていない。酸素量が通常よりも少ないことが影響しているのは確かだ。人には 低酸素状態を感じるセンサーがあり、酸素が少なくなると体が取り込もうとする。通常は眠っているが、高地に行くと働きだす。このセンサーシステムは普 段使うことがないため、いざ高地に行ったときにうまく働かないためではないかと推測する。中にはほとんど機能しない人もいるといい、体質を見極めることも 重要といえそうだ。

【高山病の予防法】
・高い山は急がずにゆっくりとのぼる。
・こまめに水分を補給する。
・アルコール、喫煙を控える。
・休養をしっかりとる。
・呼吸ほ口をすぼめ、深くやや遅く。

【重症ならすぐ下山】
高度4000メートル以上になると、高山病にかかった人の約0.5~1%で肺や脳に水がたまる「高地肺水腫」や「脳浮腫」で生命が脅かされる危険 がある。 国内の登山で報告される例は決して多くはないが、それでもゼロではないという。高山病への対処法について、酸素吸入などをして即座 に下山して治療に専念する必要があるという。

高いところは地上に比べて酸素が薄い。加えて登山は体を動かすので、体内は水分不足に陥りやすい。こうした点から、高山病の予防には水分のこまめ な補給も必要になる。水分が不足しているかどうかは「尿が黄色なら脱水状態、透明なら大丈夫というのが一つの目安」とい う。
今は身近な登山を楽しんでいる人も、もっと高い山に挑む気持ちが膨らんでくるかもしれない。天候や登山ルート、装備の点といった入念な準備のほかに、高山病の症状も覚えておきたい。