「逆流性食道炎」

投稿日:2013年8月6日|カテゴリ:医療コラム

【逆流性食道炎とは】
胃の中には胃酸という、食べた物を消化する非常に強い酸(塩酸)があります。その酸が上がってきて(逆流して)食道に入ると食道の内壁に炎症が起きたり、溶け出したりします。
このような状態を、逆流性食道炎といいます。
通常は下部食道括約筋の働きによって胃酸の逆流は防がれているのですが、何らかの原因で本来は閉じた状態の括約筋が開いて逆流することがあります。

【逆流性食道炎の原因】
逆流性食道炎の原因は、食べ過ぎ、脂肪の過剰摂取、胃酸過多などです。
胃酸過多の原因にはいくつかあります。
1960年代から急速に進んだ食生活の欧米化は胃酸の分泌を増加させました。摂取量が増えた動物性脂肪やたんぱく質は、胃酸分泌を刺激して酸の分量を増やします。
これらの要素が組み合わさって、急速に日本人の胃酸は増えています。
なお、肥満の人はそうでない人に比べて罹患しやすい傾向はあるものの、逆流性食道炎は体形、年齢、性別などに関係なく増加しています。
現在の日本では、人間ドックを受けた人の10〜15%に逆流性食道炎が見つかっています。

【逆流性食道炎の症状】
逆流性食道炎の特徴的な症状は、胸やけと呑酸(どんさん:喉のあたりや口の中が酸っぱい、胃の中身が逆流する感じがする)です。
いずれも不快ですし、胸やけは症状を感じるのが心臓に近いということもあって、不安になったり、落ち着かなくなったり、食べるのが怖くなったりして、生活の質を落とします。

【逆流性食道炎の検査】
胃酸は少量逆流するだけなら問題はないのですが、1日24時間のうち10%くらいの時間さらされるようになると、だんだん食道が溶け出します。
20%、30%となると重症です。ちなみに重症度は、内視鏡検査で粘膜障害がどの程度の範囲に認められているかで、グレードA〜Dまでの4段階に分類されます。
しかし、必ずしも検査による所見と症状の強さが比例するわけではありません。
最近は5〜6%、つまり粘膜が溶けるほどではないのに、強い症状を訴える人が増えています。内蔵、食道の知覚過敏です。
ストレスなどが関与しているのではないかと考えられており、検査で軽症であっても症状が強い場合は、治療が必要です。

【逆流性食道炎の治療】
逆流性食道炎の治療は、薬物治療と生活習慣の改善指導の2つです。
薬物治療では、主にプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬が使われます。胃酸の抑制に強い効果がある薬で、服用すれば2〜3日で症状が和らぎます。
ただし症状が軽減したからといってそこで服用を止めるのでなく、再発する可能性も考えて、軽症であっても4〜8週間くらいは飲み続けた方がよいでしょう。
逆流性食道炎は再発しやすい病気であり、良くなったといっても、それまでと同じ生活をしていたら再発するのは当然です。

【日常生活の注意点】
逆流性食道炎は、薬物治療だけでなく食事や生活習慣を改善する必要があります。
一番気をつけるべきは、食べ過ぎです。そして脂肪分を控えること。酒、たばこ、ストレスを避けることも大切です。
また特定の食品が酸の逆流を誘発することがあり、それは個人によっても異なります。
これを食べたら必ず胸やけをするというものが自分で分かっていたら、避けた方が良いでしょう。
また、姿勢や格好も大切で、食後すぐ横になったり、ベルトできつくお腹を締めたりすると、酸が上がりやすくなります。
週に1日以上の強い胸やけが続く場合は、自分で気づかないうちに生活の質(QOL)が低下している場合が多いので、かかりつけの医師に相談してください。
PPIを処方されれば、かなり良くなります。
それでも良くならない場合は、かなり重症か、あるいは逆流性食道炎以外の別の疾患の可能性があります。
胃酸の逆流だけでなく、ストレスやうつ、食道の運動障害といった複雑な原因が関与していることを疑う必要があり、消化器内科の専門医に相談しましょう。