潰瘍性大腸炎に期待の治療法 健常者の便を移植

投稿日:2015年12月14日|カテゴリ:医療コラム

2014年から「便移植療法(FMT)」が潰瘍性大腸炎などの難病に対する新治療法として臨床研究が始まりました。
便移植療法(FMT)とは病気の人の腸に健常者の便、つまり生きた腸内細菌の集まりを移植する治療法です。
この治療自体は以前からあり、2013年にアメリカの医学雑誌にオランダ研究チームの結果が掲載されたことで、一気に注目が集まりました。
なぜそんなに注目が集まったかというと、抗菌剤の長期使用により感染するクロストリジウム・ディフィシル菌によって引き起こされる偽膜性大腸炎に対して、便移植療法(FMT)を実施したところ、1回の治療で81.3%、複数回では93.8%が治癒という高い治療効果を示したからでした。

この結果より、潰瘍性大腸炎などの治療にも応用できるのではないかという期待が高まっています。

■潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎とは大腸の粘膜にびらんや潰瘍により下痢や腹痛、発熱などが続く炎症性腸疾患の一つであり、難病指定もされています。
患者数は現在16万人を超えており、原因は免疫異常などが考えれています。

■便移植療法(FMT)の臨床研究では、1ヶ月後には約4分の3が改善
順天堂大学医学部消化器内科では、2014年から20歳以上を対象に便移植療法(FMT)の臨床研究を開始しました。
患者約40人が参加し、そのうち約30人の治療結果より、健常者の便移植1ヶ月後には排便回数や血便などの症状スコア(15点満点)が3点以上改善した人 は約4分の3の患者においてみられ、重症より中等症での改善例が多くありました。 この結果を受けて順天堂大学医学部消化器内科の石川大助教は「副作用やトラブルもなく、手応えを感じている」と話しています。

■便移植療法(FMT)の方法(順天堂大学の場合)
1)抗菌剤(サワシリン・ホスミシン・フラジールなど3種類)を2週間服用し、腸内を除菌する。
2)治療日当日、ドナー(患者の家族など)から提供された便を生理食塩水で溶かし、フィルターをセットした漏斗に濾して残渣などの粗いカスを取り除く。そこに腸内細菌に影響しない水溶性食物繊維のとろみ剤を加えて整える。
3)大腸内視鏡を肛門から挿入して、大腸の奥の盲腸部分に便を注入する。だいたい30分〜40分で終了する。

■なぜ、便移植療法(FMT)は効果的なのか
潰瘍性大腸炎の人は、健康な人と比較して腸内細菌の種類数が少なかったり、ある菌だけが異常に多かったりと腸内環境のバランスが悪い状態です。
そこに健康な人の便を移植することで腸内細菌の多様性や均等性が向上し、腸内細菌叢のバランスが整えられて免疫力が強化されることが考えられます。
便移植療法(FMT)は最低3回の通院が必要です。また、臨床研究段階なため検査費など一部負担で済みます。
順天堂大学医学部消化器内科では、今後2年間でさらに50人を受け入れる予定だと発表しています。同様の臨床研究は下記の施設でも実施されており、今後実用化に向けて期待が集まるでしょう。