メタボがむしばむ目、見えにくさ感じてからでは遅い

投稿日:2015年11月24日|カテゴリ:医療コラム

メタボリックシンドロームは全身病で、肝臓、腎臓、歯や皮膚にまで悪影響を与えます。
そして、目は、とりわけ重要です。メタボ健診には、眼科検診が含まれていることが多いが、それには深い意味があります。

高血圧、高血糖、脂質異常、どれもこれも、全身の血管の機能を低下させる。血管は、末梢に行けば行くほど、どんどん細くなるが、高血糖が続くと血液がドロドロの状況になるため、目詰まりを起こした微細血管が破壊され、それより先に血液が行かなくなります。高血圧は血管壁に負担をかけることでこれを加速し、血中の脂質異常も高血糖と同様に血流を阻害します。

【網膜剥離や緑内障を引き起こす恐れも】
糖尿病による微細血管の破壊が目で起きると、視細 胞は虚血(血流の減少)に陥ってしまうのを防ごうと、何とか新しい血管を新生して対応しようとします。しかし、そこでできた血管はもろく、異常な血管であ るため、血液が漏れ出てしまう。視力障害に陥るのは、異常血管からの出血や、漏れ出た細胞外液で網膜中心の黄斑部に浮腫(水膨れ)が生じるためです。こう したメカニズムで視力障害を引き起こすのが、糖尿病性網膜症です。

また、出血後の網膜がかさぶた状になって縮んでしまうと、内側から網膜をはがしてしまう「網膜剥離」になることもある。
糖尿病網膜症が進行すると、新生血管が網膜や硝子体に向かって伸び、新生血管の壁が破れると、硝子体に出血が起き、視力低下などをもたらします。
また、網膜と硝子体の間に増殖膜という膜ができて癒着し、網膜を引っ張って網膜剥離が起こることがあります。

【動脈硬化は目の血管でも起きている】
最近、“目で分かる動脈硬化”として注目されているのが、網膜の動脈や静脈が閉塞する「網膜血管閉塞症」です。

動脈と静脈が、ほぼ並行に絡み合うようにして走っている目の血管もまた、メタボの影響で動脈硬化を来します。動脈が詰まる「動脈閉塞症」は、主として心臓にできた血栓が飛んできた結果として起こるが、これが目で生じた場合、片側の目の視界が暗くなって、そのまま戻らないことがあります。発症頻度は少ないが、脳梗塞が突然起こるのと同じように、防止する有効な手立てはありません。

そして、動脈硬化になると静脈も詰まります。圧迫 され、さらにメタボでドロドロになった血液で、下の静脈も詰まります。そうなると、血液の行き場がなくなり、噴き出してきます。血液だけでなく、同時に水 分も出てくるので、網膜の中心である黄斑部に浮腫ができ、その為、視力が急に低下したり、視野の一部が欠ける、ゆがんで見えるなどの症状が出できます。

網膜血管閉塞症は加齢による血管の老化も加わって起きるので、発症するのは60~70代が多いが、40~50代も決してまれではありません。

【糖尿病、メタボの人は40代でも目は70代】
「糖尿病、メタボは、全身の老化を促進します。40代でも、目は70代ぐらいという人もいる」と、言われています。

老化が現れやすい部位だからこそ、目の健診は大切であり、また体の中で、血管の状態を、外側から直接のぞき込むことができるのは、目だけとなっています。
「眼底検査で血管を直接見ることで、動脈硬化や糖尿病、メタボに気付くこともある」といいます。
メタボの人もそうでない人も、目の健康診断をおろそかにしないことは重要です。

この他の目の病気では、加齢とともに、レンズに相当する水晶体が濁ってくる「白内障」も、メタボの人では発症が早いことが知られています。

老眼はもちろんのこと、ほとんどの目の病気は、加齢にしたがって進行するものが多い。両目で見ていると、良い目が悪いほうをカバーする為、異常を見落とさないためには、
時々、片目で見てみることも大切です。
「“見えにくい”と感じた時には、糖尿病網膜症は既にかなり重症です。そのため、年1回はしっかり眼科健診を受けて、早期発見・早期の手当てに努める事が大切です。