強い痛み・血圧が急低下~大人の盲腸重症化注意~

投稿日:2014年12月8日|カテゴリ:医療コラム

虫垂炎は盲腸という呼び方で知られている。若い人がかかる病気という印象があるが、実際は高齢者まで幅広い年代で発症し、いつなってもおかしくはない。
ストレスなどによる免疫機能の低下が原因の1つともいわれている。
虫垂炎は他の大腸の病気と初期症状が似ており、「虫垂炎と思っていたら大腸がんだった」というケースもある。異変を感じたら忙しくてもきちんと診断を受けることが大切だ。

【虫垂炎とは】
虫垂とは大腸と小腸が繋がる盲腸からにゅっと垂れ下がった管状の臓器のことをいう。お腹の右下近辺にあり、これが炎症すると虫垂炎となる。
患者層は10〜20代が多いが、発症する年代は高齢者まで幅が広い。本来は便になるものが石のようになる「糞石(ふんせき)」などで虫垂内がつまると、その先端が閉鎖状態となる。そうすると虫垂内で細菌増殖が起き、結果的に虫垂が炎症を起こす。
異物で詰まる原因は様々である。体調が悪かったりストレスが溜まっていたりして、病原体などから身を守る免疫機能が下がると発症しやすい。外科手術で虫垂を切除すれば、2度と虫垂炎になることはない。

【こんな症状があったら虫垂炎かもしれない】
初期症状の多くは、まずはヘソのあたりにズキズキと痛みを生じ、時間の経過と共に痛みが腹部の右下近辺に移る。その頃には発熱を伴っていることが多く、痛みが移るタイミングは人それぞれである。

その他に下記のような症状が挙げられる。
・食事ができないほど食欲がない
・熱がある
・腹の上部や右下腹部に痛みがある
・歩くと右下腹部に響く

【虫垂炎だと思ったら違う病気だったケース】
■大腸憩室炎
大腸の壁の一部が外に飛び出した憩室(けいしつ)という場所の炎症。腹痛や発熱などを虫垂炎と似ている。
■大腸がん
虫垂に糞石ではなく、がん組織がつまっていおり、炎症をおこしている場合。初期症状が虫垂炎とほぼ同じだが、詳細に検査すると大腸がんが見つかることがある。

【虫垂炎が引き金になって発病する病気】
■腹膜炎
虫垂がやぶれて腹腔(ふくくう)にウミなどが散らばっておきる炎症。我慢出来ない程の痛みや血圧の急激な低下によるショック状態になり、意識を失うことさえある。最悪の場合は敗血症で死亡する恐れがある。
■極限性腹膜炎
虫垂が破れても腹腔全体には細菌が広がらない場合の腹膜炎。小腸などが壁となりウミの拡散を防ぎ、痛みは通常の腹膜炎よりは我慢出来るレベルが多い。腸閉塞になって見つかるケースもある。

【虫垂切除が不要な症例も】
虫垂炎の治療は、腹部を切る範囲が小さい内視鏡手術による切除が大半である。術後は1〜2週間で退院、軽症だと翌日に退院となる場合もある。最近では抗生 物質の投与で症状の悪化を防ぐ手法も増えており、診断技術の進歩から切らずに済む虫垂炎が判別できるケースが多くなっている。
また、虫垂は今まで切除しても問題はないと考えられてきたが、マウスの実験より虫垂が腸の免疫細胞を供給し、腸内細菌のバランスを維持するのに役立ってい るという研究結果が出てきている(大阪大学・竹田潔教授ら)。今後、腫瘍性大腸炎などの治療法の開発にもつながる可能性もあるだろう。