「B型、体内に潜み再活性化の恐れ 増える性交渉感染 〜肝炎 変わる治療(下)〜」

投稿日:2014年11月4日|カテゴリ:医療コラム

C型と並ぶ慢性肝炎のB型は、母子感染の予防が徹底された半面、大人が性交渉によって感染する例が最近目立ちます。同じB型でもウイルスの遺伝子型が従来 と異なるタイプも増えています。がん治療などの際に体内に潜んでいたウイルスが再び活性化する例もあり、注意が必要です。

B型肝炎はウイルス(HBV)に感染して起こり、国内の感染者は推定で150万人程度います。出生時に母子感染すると、肝臓にウイルスがすみ続け る持続感染者(キャリア)になり、あるときにウイルスが増加し慢性肝炎になります。慢性肝炎は自覚症状がないケースが多く、放置するとC型肝炎と同様に肝 臓がんになる恐れがあります。

【母子感染は激減】

従来の対策は母子感染を防ぐことが柱で、約30年前から生後すぐにワクチンを接種する取り組みが始まり、乳児がキャリアになるケースは激減しました。近ごろ多いのは思春期以降の性交渉による感染です。

性交渉でHBVに感染すると、1~6カ月の潜伏後に急性肝炎を引き起こしやすく、血液中にウイルスをやっつける抗体が増えると、ウイルスは排除さ れ減少します。HBVの遺伝子型は約10種類あり、このうち日本で多いB型、C型は性交渉などで感染しても、一過性で終わる場合が多かったが、最近十数年 で、欧米に多く、遺伝子が従来と異なるAタイプのウイルスが検出されるケースが増えています。A型は慢性化しやすい傾向にあり、成人後に感染すると1割以 上が慢性化してしまいます。薬で慢性化を防ぐ方法はまだ確立されていません。

【B型肝炎の治療】

B型肝炎の治療では、ウイルスの増殖を抑える「核酸アナログ製剤」や免疫の機能を高めてウイルスの排除を目指す「インターフェロン」を使用しま す。核酸アナログ製剤では今年5月、エイズウイルス(HIV)向けに使われていた「テノホビル(一般名)」がHBV治療に使えるようになりました。従来の 薬が効かなくなった耐性ウイルスでも効果が期待できるが、増殖を抑えるだけなので薬を飲み続ける必要があります。
一方、インターフェロンはだるさや発熱、筋肉痛などの副作用の懸念が強い半面、耐性ウイルスが出現しにくい利点があります。半年~1年間、週1回のペースで注射するのが基本です。
通常、35歳以下を目安に若い人はインターフェロンでウイルスを排除し、薬を飲まなくて済む治療を行います。ただウイルスを排除できる割合は低く、核酸アナログ製剤でウイルスの増殖を抑える治療になることが多いです。

【生肉食べE型も】

治療を難しくしている原因にはウイルスの「再活性化」もあります。
成人でB型肝炎にかかったことがある人の肝臓を移植した人がB型肝炎を発症したことなどから、HBVはいったん検出されなくなっても、肝臓の細胞にウイルスがすみ続けている場合があることが分かってきました。
移植では病原体などから身を守る免疫機能を抑える薬を使うため、ウイルスが再び暴れ出しやすくなります。

また、B型肝炎が治ったと思われていた患者が悪性リンパ腫を患い、その治療薬を投与中に体内にいたウイルスが再び増加。その後、急に重い肝炎になって亡くなったケースも報告されています。

体内に潜んでいるウイルスを完全に排除できる治療法は今のところなく、B型肝炎の感染歴があり、がんや関節リウマチなどを発症した場合は、治療を始める前に主治医に伝えることが大切です。

B型やC型以外で注意したほうがよいのがE型肝炎です。野生のシカやイノシシの肝臓にE型肝炎ウイルス(HEV)が感染している場合があり、これ らの肉を十分加熱しないまま食べると人にも感染します。また市販のブタのレバーでも感染例があり、潜伏期間が半月~数カ月程度と長いため、原因の特定が難 しいです。肝臓を保護する治療で回復することが多いです。

2011年の焼き肉チェーン店での集団食中毒を受け、厚生労働省は飲食店でのウシの生レバーの提供を禁止しました。その代替としてブタの生レバーを提供する店が増えていますが、厚労省はブタでも生食を禁じる方針です。