「てんかん 脳神経細胞が過剰活動 〜 基本は薬で発作抑制 〜」

投稿日:2014年9月22日|カテゴリ:医療コラム

【てんかんとは】
人間の脳の活動は神経細胞(ニューロン)の電気的活動によって行われていますが、何かの異常で大脳の神経細胞が過剰に活動(※)することにより、身体に様々な症状を引き起こします。この発作が継続的に何度も症状として現れるのが「てんかん」です。
※この部分をてんかん焦点と呼びます。

【てんかんの主な原因】
てんかんは、検査をしても異常がみつからず、原因不明な「特発性てんかん」と、頭部外傷・脳卒中・脳腫瘍・アルツハイマー病など原因が明らかな 「症候性てんかん」に分けられます。多くは遺伝しないと考えられていますが、特発性てんかんの一部には、遺伝性の可能性も指摘されています。

【てんかんの発作の種類】
♦ 全般発作
・初めから脳全体が発作を起こす
・意識がなくなり全身がけいれんする全般性強直間代発作や、意識がなくぼーっとした状態になる欠神発作、意識を消失して倒れる脱力発作などがある

♦ 部分発作
・脳の一部分から発作が起きる
・意識は消失せずに体の一部分の運動や感覚の異常が起きる単純部分発作などがある

【てんかんの主な治療法】
♦ 薬での治療
てんかんの6〜7割は薬で発作を抑えられるといわれます。
最近、薬の治療では、新しい世代の薬を1種類だけ使う「単剤療法」が注目されています。「新規抗てんかん薬」と呼ばれ、前の世代の従来薬と比べ眠 くなるなどの副作用が少ない利点があります。薬はのみ忘れることもあるため、種類やのむ回数が少なく、副作用が最低限で済むといった意義は大きく、今後も 単剤療法に使える薬が増えることが期待されます。

♦ 外科的治療
薬でなかなか治らない難治性てんかんと呼ばれるケースでは手術をする外科的療法も選択肢となります。成人の場合、2種類の薬を2年以上服用してい て効果がない場合が目安となります。子どもの場合は、脳の発達が遅れる恐れもあるので、もっと早く手術の検討が必要となり、半年くらいで手術に踏み切る ケースもあります。

手術はこの10年でかなり進歩し、脳機能の分布を調べる方法が色々と出てきているため、機能温存手術が進んでいます。

♦ 迷走神経刺激療法
てんかん焦点が1ヶ所に絞りきれない場合や色々な理由で開頭手術が出来ない場合は、迷走神経刺激療法という方法もあります。
左頸部の迷走神経に電極を付け、胸部に電源装置を埋め込み、電気刺激を与えます。約半数は発作の回数が半分に減りますが、人によっては効果が異なり、もっと減る人もいれば、きかない人もいます。

てんかんは誰にでも発症の可能性があります。グラクソ・スミスクラインが今春発表した患者を対象にした調査では、家族以外の周囲の人の病状についての理解は4割強にとどまるなど、患者が生きづらい社会が指摘されました。
てんかんだからといって一律に車の運転ができないわけではありません。免許取得や運転の注意などについては主治医とよく相談しましょう。
10月は日本てんかん学会と日本てんかん協会による啓発のための「てんかん月間」です。社会が「てんかん」を理解することも大切です。